父と母

先日、父が古希(70歳)を迎えた。

そのお祝いにと、両親と妹と私の4人で、岐阜と京都に旅行に出掛けた。


旅行当日の9月23日、この日、岐阜古川は一年で最も賑わう日。

「きつね火祭り」というお祭りがあり、全国から選ばれた1組の花嫁花婿が、狐の御一行に案内され式をあげる。飛騨古川に古くから伝わるおとぎ話がもとになり、この地で永く受け継がれているという。

ここ数年、毎年のように家族でこの地を訪れているのだが、このお祭りの時期は宿が取れず、今回は半年以上前から宿を抑えて臨んだ。


飛騨古川駅に到着し、宿までの道すがら、狐のひげを顔に書いている人たちとすれ違った。

一人ではない。もう何人も、化かされたかのように、素知らぬふりで街を歩いていた。

そう、もう祭りは始まっていた。

目的の宿に到着すると、宿の方々もみんなひげがある。

浮いているのは私たちくらいだ。

急いで支度をし、私たち家族もそれぞれにひげをもち、夜の街へ繰り出した。

ひげを描いてくださるのは、お宿の女将。

母と父。狐のひげがよく似合っている。

私も描いてもらった。

妹は少しミステリアスな感じに。


さて、夜の行列が動き出した。

ぼわっと、かがり火が闇夜に浮かび上がる。

狐に扮した人たちが、松明をもって街中を練り歩く。

シリアスな感じをイメージしていたが、リラックスしていて楽しそうだ。

花嫁・花婿の登場。

美しい花嫁に、大量のシャッター音がきられる。

先頭を歩く白髪の男性が「狐の嫁入りでござい」と叫ぶと、後ろの狐たちが、歩みを進める。そうして舞台に辿り着いた一行は、数百といえる観客の前で、嫁入りの儀式をするのだった。


お祭りというものは、本当に興味深い。

狐につままれたような、なんとも不思議な夜だった。

それから私たちは、お宿に戻り、夕食をいただいた。

お宿の大女将の粋なはからいで、夕食の際に、古希の衣装を着て記念の撮影をすることができた。感謝。父もとても喜んでいた。

私たちは、まだ幼かった頃の思い出を話した。

こういうときには決まって姉の大食いの話か、妹が可愛がられていた話になる。

父は大声で笑い、母は目を細めて笑う。二人とも、本当に嬉しそうな表情を浮かべる。


大変な日もあったけれど、この日を迎えられてよかった。

父と母を支えてくれる人たちに感謝でいっぱいだ。


翌日、私たちは京都に移動した。

「君たちが幸せになれるように」

そういって、いろんな神様に御参りしている父と母。


 友達を大切にする

 お年寄りを気遣う

 よく笑い、感謝し、前向きに生きる


そんな共通点をもった夫婦。

まだ両親のそばにいたい、親離れできていない自分に気づいても、この二人の笑顔をずっと見ていたいと思う。

神様、有難うございます。

ずっと元気でいてね。

Blue Empathy

自然と、人と。 深く連れ合いながら、時に訝しみながら。 一筋の共感を、共に生きる力へ変えていくことに心を注いでいます。 ここでは、自身の取り組みのこと、また世界を旅しながら出逢った景色や、現象や、人を通じて感じたことを気ままに記していこうと思います。

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